女子の3A基礎点は低すぎると思う、二、三の理由
女子シングルについて、思いが溢れてなかなか語れない。
浅田選手のフリーは、女子フィギュア史上最高の演技だった。
金メダル争いについては、いろんな人が語っているし今は割愛しよう。
ここでは女子のトリプルアクセル(3A)について書いてみる。
以前書いたように、3Aや4回転ジャンプの基礎点は高くなった。3Aは少しだけど。
そして回転不足判定が緩和された。
男子ではこれが、4回転時代を招いた。
みんな当たり前のように4回転を入れてくる。全体的にレベルがあがった。
五輪男子シングルでは、転倒を含むミスが多くなってしまったのは残念ではあるけれど、競技が進化していると感じる。
では、女子はどうだろう。
3Aにチャレンジした女子選手は一体何人いたのか。
…ご存じの通り、浅田選手だけ。
なぜか?
簡単に思いつくのは「難しいジャンプだから誰も飛べない」
もしそうなのだとしたら、トリプルルッツに毛の生えた得点しか出ないのはもちろんおかしなことだ。
本当は違うと思うんだ。
浅田選手が3Aを跳ぶようになったのは、先輩選手たちが練習していたから。
今は引退してしまったけど、中野選手だって跳んでいた。
全米ではキミーマイズナー選手が跳んでたし、練習レベルではチャレンジしている選手はたくさんいるはず。
でも今、トップ選手ですら、試合で誰も跳ばない。
五輪開催国ロシアは、国をあげてメダルを獲るべく取り組んできた。
金メダルをとったソトニコワ選手、団体金メダルに貢献したリプニツカヤ選手をはじめ、GPFに出たパゴリラヤ選手、ラジオノワ選手、そしてジュニア勢まで入れたら、本当に恐ろしいほどの選手層。
そこには選手たちやそれを支援する人たちの並々ならぬ苦労があっただろう。
でも、まだ誰も国際試合でトリプルアクセルは跳ばない。
正直、彼女らがその気で練習したら何人かは跳べるんじゃないかと思う。
これはつまり、チャレンジさせてないんだよね。
割に合わないから。
今の採点基準では苦労の割に報われないから。
「スポーツ」って何かもう一度考えてみようよ。
最高難度のジャンプを跳べるのに、点が出ないから跳ばないってなんなの。
この構造は、3Aほどじゃないけど、コンビネーションのセカンドにトリプルループをつける場合(以下セカンド3ループ)にも通じる。
セカンド3ループは、ソトニコワ選手やアメリカのレイチェル・フラット選手(引退してしまったけど)も跳んでた。
ただ、試合でクリーンだと認められることが、最近のルールだとなかなかない。
ソトニコワ選手も五輪での構成に入れていない。
回転不足判定をするなとは言わない。
無理な姿勢での着氷と、きちんと回転している着氷は区別するべきだ。
でも、その結果誰も跳ばなくなっていることは問題視するべきじゃないのか。
浅田選手は挑んだ。
採点がどうとかではなく「自分ができる最高難度を見せたい」から。
これぞ真のアスリート。
普通の選手は、採点を気にする。これは当たり前のこと。
採点で報われるのが当たり前のこと。
今の採点では、女子選手は3Aもセカンド3ループも跳ばない。
これでいいの?
フィギュアスケートは、本当にスポーツですか。