Dailyscape Fragments

フィギュアスケート/ユーリ!!! on ice/お笑い/ミステリの話など。ちらかっててごめん。

Twitter ID: saenishi

勇利とヴィクトル、演技へのアプローチの違い #ユーリオンアイス #yurionice

第3滑走、勇利とユリオにヴィクトルが振付するシーンはそれぞれの特徴が現れてて面白かった。今振り返るとよくぞあんな短時間に詰め込んでるなという濃厚さ!

勇利はヴィクトルの「エロス」振付を見て
「物語が浮かびあがって見えたんだ」
一方ヴィクトルは、ユリオに
「じゃあヴィクトルにとってのアガペーって何だよ!」って聞かれて
「そんなのフィーリングなんだから言語化できるわけないだろー?」
と対照的。


ヴィクトルは、自分が感じたイメージや感情をダイレクトにスケート表現にできるんだと思う。
アガペーを聴いてそのままリンクで体を動かすと、あの、儚い何かが天に昇るのを見上げるような、振付そのものが生まれる。
言語で伝えようとすると「Japanese templeに行くと感じるアレ」みたいになっちゃうと。

一方勇利は、感じたものを感性豊かに言語化、というより物語化して咀嚼するタイプ。曲やテーマそのままを演じようとするより、テーマから言葉を使ってイメージをどんどん膨らませて、物語を紡ぐ。その過程が独自性を生む。
内的なイメージから作るから、時にそれは一般人には想像しがたいイメージも含まれ、それがつまり「カツ丼」だったりする。食欲と性的な愛はそんなにかけ離れてはいないけれどね。

もちろんどちらも、そのやり方しかできないわけじゃなく、ヴィクトルはイメージをつなげて物語を作っていけるし、勇利も物語のイメージから自分の振付を発想していくことはできるんだろう。得意なやり方が違う、ってことで。

さてリアルのフィギュアスケートでも、いろんなタイプの人がいますね。どう演技を作っていくかについては、インタビューなどを通して、断片しかわからないのではっきり「こっち!」ってわかるケースはそう多くなかったり。
ただ、ミヤケンは多分「ダイレクト」メソッドなんじゃないかなーと思う。
たとえば、ユーリのトークショーでの話。

www.animatetimes.com

オタベック・アルティンのFS(フリースケーティング)ではなんと「“建国“をイメージして欲しい」と依頼され、壮大なイメージという構想の末に”農業“を連想したとのこと。

 …農業………?
素人では絶対出てこなくない?すごいイマジネーション。
多分勇利だと
「昔、都から遠く離れた場所に、小さく貧しい集落があった。」
とか始まるね!拝聴したい…

他に、勝手に私が思う「ダイレクト」派は鈴木明子ちゃんとか(ご結婚おめでとうございますー)。感情やイメージに対して、間に言語化なしで、ポーズが取れそう。

若手の選手ってどうしても「振付の先生が腕をこうしていたので私もこうしています」みたいな、教えられたとおり滑ってそうだなーって選手が多いんだけど、あっこちゃんは違っていて「だってこの感情を表すなら手はこうでしょ?」だった印象。

あと、そうだなー、ミーシャ・ジー選手もそんな気がする。
…ってみんな振付師*1だな!そりゃあヴィクトル、「ユーリ」界では今季一番結果出してる振付師なわけだw

一方「物語化」メソッドは、勇利みたいに独自の物語を生み出しちゃう人はそこまではっきりわからないけれど、ストーリーをしっかり追うほうが演じやすい、という選手は多そう。

ストーリーを自分でアレンジしちゃったことで覚えてるのが、中野友加里さん。

「ジゼル」とともに : 中野友加里応援ブログ (Yukari Nakano Fan Blog) :Go, Yukarin!

さらに、一般的には悲恋と受け止められる「ジゼル」の物語の解釈について、中野選手は「勝手にストーリーを変えました。私はハッピーエンドにしたいんです。死んでしまうんですけど」。曲が鳴ったと同時に「自分が組み立てたジゼルになりきることっていうのが目標です」。

 友加里ちゃんのジゼル、可憐で素敵だったな…

 


Yukari Nakano - 2008 SA FS


あと、町田樹くんももちろん言語化咀嚼タイプだろうな…
これは紹介しなくてもみんな頷くと思うので出典省略。

あとは普段フィギュア雑誌そんなに読まないので出典がわかる言説をあまりしらないんだけど、たとえば羽生選手とか。
2011/2012シーズンのインタビュー。

羽生結弦選手インタビュー その3&その4 -浅田舞のスポ友! : MURMUR 別館


前半、震災のことを話すくだりは読むのまだつらいですが…真ん中辺り、インタビュアー(浅田舞さんです)が「今年のプログラムは?」と聴いてるあたりから演技の話に。

(フリーのロミオとジュリエット*2について)

難しいですね。作品が有名すぎるのもあるし、渡された時に、本当にこれを使いこなせるのかなって、重圧はありました。でも、逆に、使いこなしてやるって、思いました。愛だとか難しいものを表現しなければいけないのは難しいけど、自分のロミオとジュリエットという風にできたらなって思います。大ちゃんや崇ちゃんが使ったロミオとジュリエットとは曲が違うので、使っている選手を見たことはないので。期待が大きいと考えて、期待に応えてやろうと思っています。でも、難しい曲だけど、ストーリーがあるので、結構、曲に入っていけるんですよ。去年の「ツィゴイネルワイゼン」はストーリーがなくて、自分の中ですごく苦しかった。

 ストーリーのないツィゴイネルワイゼンは苦手だった羽生君、ショパンのバラ1とかはどんなアプローチだったんだろうなー。インタビューあったら読んでみたい。

こうしてみると、私「物語化」得意そうな選手が気に入りやすいんだなと改めて。
たまたまだけどW大学並んだな…でもなんかわかる気がするw

勇利をヴィクトルが振付けている時、勇利は自分のストーリーをヴィクトルに伝えたのかな。どういうやりとりがあったのか。何にせよ、お互いを補い合うコラヴォレィション!!!(byJJ)だったのは間違いない。勇利の紡ぐ物語はヴィクトルの今後にも刺激になるんじゃないかなー。
振付中の練習観たいよー!
スケオタ3姉妹隠し撮りしてんだろー!
こっそりアップしてくれー!

ゆるーいスケートファンなのでリアルは日本のメジャー選手の話ばかりでしたが、海外選手の解釈も面白いものいっぱいあるんだろうな。そして「ユーリ」界の他の選手達はどうなんだろう?続編でやってくれないかなー!

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*1:ミーシャ・ジー選手は今年アンナ・ポゴリラヤ選手のSP振付けてましたね。素敵!ステップシークエンスがとりわけミーシャらしい

*2:ちなみにこれは阿部奈々美先生振付の方、伝説のニースワールドのやつね

衝撃の記者会見を改めて考える #ユーリオンアイス #yurionice

前回記事でちょっと町田君を思い出し、そして昨日小塚君が氷上に戻ってくるという超嬉しいニュースを読み、その流れで思い出したことがあって。
勇利のGPシリーズ記者会見について、ちょっと思ったことを。

町田君の記者会見といえば。

2013年GPシリーズでテーマ:「timshel(ティムシェル)」

touch!★テレアサ | 『フィギュアスケートグランプリシリーズ/ファイナル2013』記者会見リポート!

とか、

2014年のテーマ:「極北」

町田樹選手、今シーズンのプログラム発表 テーマは“極北” | ORICON NEWS

とか、
あとオリンピックのインタビューで
逆バレンタインできるよう頑張ります」

町田 ミス連発11位も強気「あしたは逆バレンタイン頑張ります」― スポニチ Sponichi Annex スポーツ

などなど、独特の町田語録をご存知の方も多いと思います。

が、町田君、ティムシェル前の2012年頃までは全然そんな子じゃなかった。
「このチャンスを生かしてステップアップしたい」

国内外のコーチに支えられ [フィギュアスケート企画] - 大阪日日新聞

といったコンサバ系コメントをまっすぐ返す、読書好きで、氷上以外はちょっと大人しい印象の青年だった。
だからティムシェル会見見たとき「ま、町田君何があったの?」と相当驚いて、海外での練習とかが影響しているのかな…とか思ったりしたんだけど、この答えは町田君のコーチである大西先生が明かしてくれた。

「このレベルなのにえらい弱気やし、遠慮していた。目標も『できればソチ五輪に出たい』とか『僕は(代表候補6人中)6番目の男』なんて言うしね」と大西さん。伸び悩む町田の課題は精神面にあると思い、「できればじゃ一生できへんぞ。有言実行で自分で責任を取る、それが男や」と、あえて厳しい言葉を投げかけた。

 この言葉が町田を変えた。

【フィギュア】「弱気」の町田を変えたコーチ大西勝敬さん、2度目の五輪挑戦 関西で指導者38年(1/3ページ) - 産経WEST

 町田君は変わろうとして、あえてビッグマウスで自分を追い込んでた。
というエピソードを思い出した上で、「ユーリ」第五滑走のGPシリーズ記者会見。

最初観た時は。
「えっと待ってこれ全国ネット*1で盛大にヴィクトルへの愛を告白してるんだけど、勇利そういうキャラ?!スケ連ページには「いつも応援ありがとうございます。自分らしい滑りが出来るよう一生懸命がんばります。」なんて無個性なメッセージが載ってて、試合が終わってすぐネットニュースで何て言われてるかチェックしちゃうような子じゃなかったっけ???」
という衝撃でいっぱいだった。

でもこれは実は、第四滑走の「踏み込むのを怖がってちゃダメだ」の延長にあるものだったのかも。
メンタル弱くて、世間に叩かれるのを気にしてる自分を変えようとしてたのかも。
記者会見終わってから「ぁあー恥ずかしかーーー!」ってなってたのかな。

「ユーリ」は本当に、物語をこれでもかというほど詰め込んでて、ワンシーンが表す事がひとつとは限らないんだよね。だから繰り返し見ると発見があって沼につかっていくのかもしれない。

ところで盛大に告られてるヴィクトルがなんて反応するのかと思ったら「ネクタイ燃やすよ♪」って言ってて、ドライだなwって印象だったんだけど、このシーンって日本語の放送見てるからヴィクトルは勇利が何言ってるのかわかってない?この後優ちゃんかミナコ先生が通訳したのかなあ。「愛のようなものに気づくことができました」と言ってるのはこの記者会見だから、後からは伝わっているはずで。
「初めて自分からつなぎ止めたいと思った人、それがヴィクトルです」
を通訳されたのだとしたら、ヴィクトルどんな顔したんだろうな。超観たいよね!
まあGPシリーズ記者会見ということは10月で、ヴィクトルはもう日本に半年近くいるから、ある程度日本語がもうわかるかもしれないけども、あとから通訳される方が面白いから個人的にはそういうことにしておきたい。勇利とのレッスンは英語だろうし、一緒に行動してたらそこまで日本語いらないだろうし。

あ、英語で思い出したけど15歳のユリオが一人で長谷津に来たのって結構すごくない?一人で飛行機のチケット取って、成田から国内線に乗り継いで、電車乗ってきたとすると、英語ある程度できないととても来られないよね。長谷津でも、勇利や優ちゃんとですら英語でしか話せないし(ヴィクトルオタの勇利がロシア語できる可能性は微レ存ですが)

トップスケーターは海外のコーチや振付師と仕事するからいずれは英語が必要だけど、ロシアは結構国内で揃えられちゃうから、15歳時点ではそこまで必然性がなさげなのに。
服装の趣味がアレで乱暴だけど、英語の必要性はちゃんと認識して真面目に勉強していたのだろうか。何それ!かっこいいじゃん…

そして優ちゃんも英語不自由ない感じだよね。海外に行くような選手だったりしたのかな?

って大分話が逸れましたのでこの辺で…

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*1:長谷津で観られてるから多分

作り手に同情せずにいられない、ジャンプ難易度調整。その2 #ユーリオンアイス #yurionice

前回:

saenishi.hatenablog.com

4T単独は必須だけど、4Sを跳べる選手はまだまだ少なかった(羽生君はフリーで4S決めてますね)。

の続きです。

「ユーリ」製作中だった2014年GPシリーズ当時、他の高難度ジャンプはどうなっていたか。

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作り手に同情せずにいられない、ジャンプ難易度調整。その1 #ユーリオンアイス #yurionice

さて、書きたいことをつれづれなるままに書いていますが、ここで大前提について触れておきます。

私は『ユーリ!!! on ice』のスケートシーンだけじゃなくてストーリーもキャラクターも作品の世界観まるごと大好きです。そしてフィギュアスケートも大好きです。
観ているとフィギュアスケートの演技やエピソードを思い出し、アニメでは多分表現しきれなかったことを勝手に想像し、リアルのフィギュアスケートを観てはこれをユーリのキャラが滑ったらどうなるかなって想像し、無限ループ状態でこの作品を楽しんでいます。
リアルと違う部分についてのツッコミや推測もその楽しみの一つです。
これらの感情に名前はないけど、あえて愛と呼ぶことにしました!
…なので、決して作品批判ではないことをどうかご了承ください。愛だから!

では今日の本題。
「ユーリ」作中のジャンプレベル、リアルと実に拮抗しているよね。
その一方、スケート普段見る人だと、ヴィクトルの代名詞が四回転フリップなのってちょっとひっかかりませんか。だってフリップより難しいルッツ跳べるのに!
でもこれって本当は、涙ぐましい作り手の調整があったんだと思うのです。

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リアルを凌駕しそうなオリジナル楽曲たち。#ユーリオンアイス #yurionice

前回書いた、「アニメだからこその省略が逆に付加価値を生んだ」話の派生で、作中の音楽の話を。

ユーリ、音楽がなんかもう全般的に素晴らしいんですよ。

続きを読む

私にとって「ユーリ!!! on ice」は大体「本格ミステリ」だった

ブログ書くの久しぶりだ。

そんなわけで「ユーリ!!! on ice」にドはまりしています。

「本格フィギュアスケートアニメ」が作られているらしいことは、ミヤケンが振付で関わっていたこともあり、スケートクラスタ界隈でも話題になってた。

ただ、スケートファンの視聴に耐えるのは難しいだろうなと、正直期待してなかった。楽しくツッコミながら見れたらいいなと。

だんだん放送が近づいていて、グランプリシリーズ(以下GPシリーズ)をワンクールで扱うという記事を読んだ時は目を疑ったね!無茶すぎる。

 そして逆の不安が湧いてくる。もし本当にスケートファンが楽しめるものができたとしたら、それはスケートを知らない層にそっぽを向かれるのではと。

アニメとして成功させるには、全くフィギュアスケートを知らない人に楽しんでもらわなくてはならない。でもそのためには現行のルール、採点方式は非常に難解。

たとえば、あるジャンプを跳んで着氷した選手と転倒した選手がいたら、普通着氷した選手の点が上って思うよね。それが実際は回転不足だと転倒より下回ったりする。
また、同じジャンプを跳んでよい回数が決まっていて、跳びすぎると減点される。
単純な技術点の足し算だけで決まるのではなく、演技構成点が別にあり、これがまた、選手自身もよくわからないとこぼすほど面倒!

…ってこんな細かい説明をアニメ内でとても尺に収まらない。

で、GPシリーズを描くとしたら、他の選手もある程度描かなくてはならない。

日本の選手が全然出ない試合を深夜に放送することがあるけど、たとえば男女各3人の演技でも番組的には1時間近くにはなる。そもそも、ショートプログラムでも2分半あるわけで、アニメのストーリーがある中では実際と同じ尺は取れないはず。主となる選手はある程度演技に時間を割くとしても、脇役選手は「こんな演技をしました」ぐらいになる?それはそれで、きっと物足りないよね。

…そしていざ、作品を見てみたら。

 

これは奇跡だね。

見ている間本当に夢中で、幸せだった。

 

アニメ作品としてのキャラクターやストーリー、映像の魅力が圧倒的なのに加え、スケートファンとしての希望も存分にかなえてくれた作品だと思う。

もちろんリアルのスケートに敵わない部分はたくさんある。

でも、アニメで伝えたいのだという強い意志が漲っていて、それがリアルのスケートではできないことまでやってくれたなって思う。

作品として素晴らしいので、もう描かれている内容そのままを受け止めれば十分面白いんだけど、スケートが好きでリアル競技の実際を知っていると、同時にもう一つ世界が見えるんですよ。

作中内の演技で描かれていない部分を脳内で保管できて、どういうタイプのスケーターか、果ては今までのキャリアまで想像…いや、妄想が広がる。

そして、制作側がアニメという表現や尺の制約といかに戦っているかを想像する。

作品を見ていてちょっとひっかかったところをそうやって考えるのが、私はすごく楽しかった。

…で、これ、既視感に溢れてまして。

本格ミステリ読んでるときと、そっくりなんだよ。

そりゃー私、夢中になるわけだね…。

 

ただ「本格ミステリも好きでスケートもそこそこ好き」と言う人が近くにいないので、同意してくれる人が回りにいないのであった。

お茶の間観戦が基本だから、スケートクラスタ仲間がいないからなー。

そんなわけではけ口がないので、これからブログに吐き出そうと思っています。

 

ちなみに「ユーリ!!! on ice」は、スケート全然わからなくてもミステリそんなに興味なくても面白いので、よければご覧ください。今ならあちこちで観られます。

 

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